舞城王太郎『バイオーグ・トリニティ掌篇集』

 ウルトラジャンプ2014年11月の付録は舞城王太郎の文庫本で、「呼ぶ声日子」(ウルトラジャンプ2014年月号初出)と「箱運ぶ鳥」(書下ろし)という二作が収録されている。付録としては上出来で、160ページあって、ちゃんとしたカバーもついてて、造りは通常の集英社文庫とそんなに変わらない。

ウルトラジャンプ 2014年 11月号 [雑誌]

ウルトラジャンプ 2014年 11月号 [雑誌]

 

  福井特別編ってことで、舞台は毎度おなじみの福井県西暁町である。両手に穴が空いて、その穴からものを吸い込んで融合しちゃえるっていう設定は本編ともちろん同じで、この穴が空いた16歳の春原秀雄が主人公となる。秀雄の家族は離婚問題を抱えていて一家はバラバラなのだけれど、家族をまるごと掌に吸い込んじゃうわけにもいかず、なんか吸い込むもんないかなってことで山に入ったところ、その山ん中には結界が張られてて、これはヤバイぞと駆け逃げてたら、勢いあまって崖からなんか吸い込みながら落下してしまい、気を失ってる時に呼ぶ声日子(よぶこえひこ)っていう神様に出遭うってのが「呼ぶ声日子」の導入部で、すったもんだがあって続編「箱運ぶ鳥」につながる。

 舞城王太郎は短篇より長篇の方が好きなのだけど、この掌篇集は二作とも面白かった。秀雄によって、ヨブコ、ヨブコ、と呼ばれる呼ぶ声日子は『ディスコ探偵水曜日』の梢なみに可愛いし、バラバラ生首タワーも出てくるし、時間操作もなかなかかっこいい。本編のマンガを読んでなくても愉しめる内容なんで、舞城作品好きな人は読んで損はないかと。

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舞城王太郎バイオーグ・トリニティ掌篇集』2014(集英社UJ文庫)】