木下古栗「人間の本性を考える」

 「小説すばる」2014年10月号掲載作品。短篇。古栗のために「小説すばる」生まれて初めて買った。というか、読むのも初めてか「小説すばる」。古栗の「小説すばる」デビュー作であります。

 

小説すばる 2014年 10月号 [雑誌]

小説すばる 2014年 10月号 [雑誌]

 

 

 

*******以下、ネタバレがあります*******

 

 

 個人投資家の山本広重が、就寝中に携帯電話を肛門に挿入されていた体験と、自らの投資家としての遍歴を聴衆の前でプレゼンする、という内容なのだけれども、開始早々、肛門、肛門、肛門、肛門、と連呼していて、「小説すばる」誌上においても古栗は頼もしい。下ネタばかりなのに、聴衆(読者である〈あなた〉も含まれる)に対して、ところどころで「下品な話で申し訳ありません」と白々しく詫びるのが、かなり笑えた。

 タイトルは、スティーヴン・ピンカーの著作の邦題から借用したみたいで、ピンカー読んだことないのだけれども、TEDでプレゼンしている動画を見たら、そこにはユーモアを交えながら〈真面目な話〉をするピンカーさんがいた。もちろんアヌスの話は出てきません。

 出だしの肛門ネタにはちゃんとオチがあって、見事に着地する。ええ、ええ、そうですとも、〈下品な話〉は大好物でございますとも。すっかり見透かされてますね。本作では、古栗の小説を読む愉しさと虚しさを同時に感じることができる。しっかし、古栗はほんと巧みだなあ。

 

 【木下古栗「人間の本性を考える」2014(「小説すばる」2014年10月号)】